| 使われなくなったパソコンの再利用に挑む |
| IT普及の影に中古PC市場の闇 |
UCCの奮闘追跡
使われなくなったパソコンはどこに消えているのだろうか。
急速に広まったIT化の中、大量に生産、消費されるパソコン。
家庭の普及率が50%を超え、携帯電話と共に現代生活に
なくてはならない存在になった。
パソコン・メーカ各社のし烈な戦争によって、機能や性能は、
日進月歩の発展を遂げ“ドックズ・イヤー”などと呼ばれている。
パソコン1台あれば写真の加工から音楽編集なども可能だ。
シーズンごとに新製品が店頭に並ぶ一方、3年前に発売された
パソコンは、たてえ動作しても、時代遅れと扱われ、
大量に廃棄処分されている。
埼玉県草加市に、使われなくなったパソコンを全ごくどこからでも
無料で引き取り、分解・組み立て・修理して、教育機関やボランティア
団体に無料あるいは有料で提供したり、安価で輸出しようと計画している
会社が誕生しつつある。
Universal Community Center(以下、UCC)事務局長の菅野正敏さん
(55)は、約20年前からパソコンの持つコミュニケーション能力に注目して
いたが、インターネットガ野放図に普及すると、「子どもを有害サイトから
守る会」などを立ち上げてきた経歴の持ち主。それだけに、パソコン業界、
特にメーカーに対する視線は厳しい。
年間およそ1200万台が生産、販売される巨大なパソコン市場。その一方で
年間約600万台が廃棄処分されている。菅野氏によれば、日本には廃棄された
パソコンを扱う専門業者と市場があり、様々な形で廃棄処分されているという。
安易な廃棄と製造者責任に着目しつつ、障害者や高齢者の自立と
コミュニケーションツールとしてのパソコン事業を始めようとしている菅野氏の
周辺を取材ししていくと、パソコンをめぐる業界の闇(やみ)が見えてきた。 |
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「今の日本のように、コマーシャリズムに演出された技術革新ブームの状況では、
型遅れにされてしまったパソコンが膨大に出てきます。しかし、それらのマシンの内
70〜80%は、再利用の方法や用途によっては、まだまだ活躍することが出来る
マシンなのです」。埼玉県草加市のNPOユニバーサルコミュニティセンター
(以下、UCC)の事務局長・菅野正敏さん(55)は、山のように積まれたパソコンに
囲まれながら声を強くした。菅野さんを中心に昨年3月に設立されたUCCは、
使われなくなったパソコンやプリンター、モニターなどを全国どこからでも無料で
引き取り、分解・組み立てをして修理、動作確認後、教育機関やボランティア団体、
アジア各国などに無料または安価で提供することを主な事業にしている。 |
アメリカに次ぐ世界第2位のインターネット利用者数を誇る日本。総務省の今年3月の
発表によると、国内の6492万人(対前年比1349万人増)がインターネットを利用している。
パソコン・メーカーのし烈な競争の中、急激な発展を続けるパソコンは改良され、
新商品がぞくぞくと開発、店頭に出される。昨年は、およそ1200万台が国内で生産された。
しかし、このような急激なIT化の裏では、型は古くなったが、まだまだ使用できる
パソコンが廃棄され、山のように積まれているのが現状だ。
「年間1200万台が生産される一方、600万台がゴミ扱いになっています。
使われなくなったパソコンは、放置されるか、あるいは“廃棄”というラベルが貼られ、
ゴミとして廃棄回収業者に有料で回収されるのが大半です」(菅野さん)。
回収されたパソコンはどうなるのか。
中古パソコン業界に詳しい関係者によると、廃棄回収業者の大半は単純に
焼却処分にするらしい。しかし、廃棄を条件に有料で回収されたにも関わらず、
中古パソコンを集める専門の業者に転売され、海外に向けて輸出されるパソコンもあるの
だとういう。
廃棄された中古パソコンはが全国各地から集まり、競り売り方式で売買されるマーケット
が存在していると言うのだ。関係者によれば「中古パソコンをセリに出す業者が全国に数社ある。
100台単位で競り出され、大きなお金が動いている」と声をひそめる。
日本製のパソコンは、ゴミとして出された割には性能も品質もよく、海外での人気が高い。
最近まで、セリには中国系の買い手が目立っていたという。セリ落とされた中古パソコンは、
1つのコンテナに約650セット詰め込まれ、およそ18万円の運賃で続々と中国に運ばれる。
1セット300〜500円で売れれば輸送コストは出る計算だが、中国では、このような中古パソコンが
日本円にすると約4万円程度で売りに出されている。
しかし近年、「世界の工場」となり最先端の技術と材料が集まる中国では、急速に技術革新が
進み、パソコン1セットを約1万円で作れるようになった。そのため、日本製とはいえ、型の古くなった
パソコンは、中国に送られてもゴミとして扱われるようになるだろう。最近では中国人に代わって、
オイル・マネーが流れ込んでいるパキスタン人が市場に入り込んでいる。
廃棄するという契約で有料回収したパソコンが、海外に向けて売られていると言うことが事実と
すれば、立派なブラック・マーケットだ。またその市場はかなり閉鎖的で、新規参入者に対しては、
さまざまな制約をかけてくるという。
セリが開かれているという、首都圏近郊にある競艇場と倉庫が共存する街に行ってみた。
周辺には運送業者などの倉庫が軒を列ね、外国人労働者の姿が多く見られる。
周辺住民や公共施設に話を聞いたが、関係のありそうな情報は得られず、業者の倉庫は発見する
ことができなかった。 |
| 年間600万台が廃棄 |
| 無料で回収、修理ほどこし教育機関などに安価で提供 |
活動開始当初はまったくのボランティア活動として、無料で回収したパソコンを修理して無料あるいは
安価で教育機関やボランティア団体などに提供していたが、一部のマスコミで取り上げられたこともあり、
「引き取ってくれ」、「無料のパソコンがほしい」などの注文が殺到。「大量の注文に修理が追いつかなく
なった」(同氏)。
ところで、UCCに回収された大量のパソコンは大きく3つに分けられる。修理すれば十分使えるようになる
パソコン。動作はしないが部品だけは使えるパソコン。動作もせず部品も使えないが資源として再利用できる
パソコンだ。動作するパソコンを安く販売したり、部品を資源として再利用化する過程で利益を上げる。
しかし、大きな収益はあがらない。
「精密機械のため、すべて手作業でやっています。多くの注文に答えるにはどうしても多くの人手が必要です。
現在のスタッフでは1年で30台ぐらいが限界。人件費などを考えると多くのスタッフは雇用できない」と菅野氏は、
人件費などの事業の採算面の問題にぶつかった。
しかし菅野氏は、パソコンの豊富な知識を活かしたパソコン・スクールに活路を見い出す。
「“ITブーム”という名のもとに急速に全世界で進みましたが、よくよく考えてみると大きな会社や組織だけが
利益を集める仕組みになっている。例えば、高価で独占的なOS(オペレーティング・システム)やアプリケーション
市場などがその定型です」(同氏)。
パソコンはOSがないと起動しない。そのため、現在のIT関連技術は、OSを中心に開発されいる。そのOS市場
は、パソコンを買い替えるごとにOSを新規で購入しなくてはならないなど、独占的なシェアが形成されつつある。
しかし近年、世界中の一般ユーザーによって開発されたOSやアプリケーションが無料で
ダウンロードできるようになった。
菅野氏はあまり知られていないそれらの入手法や使い方、セキュリティなどを教えるパソコン・スクールを開校、
好評を得る。そこには思わぬ副産物もあった。
「スクールを通して、普段あまり接点がない高齢者や障害者の方々との出会いがありました。非常に熱心に
受講していただく中で、新たな展開が思い付きました。彼らと連携してパソコンの修理・回収作業をし、自立できる
ビジネスを創造できるはず」と、菅野氏は力説する。
その事業計画は、実現に向かって進行している。自ら全国を飛び回って参加.・支援を呼びかけ、仲間を集めて
いる。「各メーカーも焦っているようですが、今年10月施行予定のパソコンリサイクル法までには間に合わせたい」
と菅野氏は目を輝かせた。
55歳にして新規事業を開拓し続ける菅野氏の究極の目的とは何か。
「“もったいない”と言う概念は、広い世界で日本だけにしかいないと言う話を聞きます。その日本人は大量生産・
大量消費の渦中にいる、日本人の独自性が変わってしまったのではないでしょうか。パソコンが壊れても、
知識を絞り、汗を流しながら自分で修理・改良するような文化を作っていきたい。その中で日本人が忘れかけた
“物を大事にする心”を取り戻すことが出来たら最高ですね」(同氏)。
現在、中国などに輸出されているパソコン関連機関の内、10〜20%は特殊な技術がない限り、廃棄するしか
ないものだ。それらの機器の行き着く先を誰も知らない。
取材に応じてくれた関係者は「中国は広いから、砂漠に野積みしておいても分からないよ」という。
そして「もうそろそろ、中国政府は日本からの中古パソコンの輸入を規制するかもしれないよ」と耳打ちしてくれた。
もしそうなると、年間600万台と言われる日本の中古パソコンは、どこに行くことになるのだろうか。 |
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