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≪ビックコミック  2003年7月10日号≫

【ゴルゴ13シリーズ】
<第431話 前編>
さいとう・たかを
さいとう・プロ作品

「“オリオン”日本発の基本ソフトな訳ですが、アメリカ、特にパソコン基本ソフトの
“インスパイア”で市場を支配するサイバーテクノス社から・・・」

「反発は予想されませんか?」

「ソースコードがオープンで電気や水のように誰もが自由に使え、自由に改良できる基本ソフトがこれからの社会には必要です」

「反発があるとしても受けて立つしかありません」

「“オリオン”は、今後もライセンス料を取らないということでしょうか?」

「開発者である北下大学は、その方向で了解済みです。基本ソフトは社会の共有の財産であり、私達はそこから発展する技術や
商品を追求すべきです・・・」

「その考えで我が国の関連業者は、合意しています」

<ユビキタスの迷路  PART1 ユービトピア>

「この街は、サイバーテクノス社を中心とする、IT関連産業のデモンストレーションのために作られ、
コンピュータが“遍在する”という意味の“ユビキタス”と、理想郷のユートピアとの意味を掛けて
ユービトピアと名づけられました。」

「その名の通り、あらゆる所にコンピュータが設置された、コンピュータの理想郷なのです!」

「人間にとっての理想郷・・・と、考えてよろしいのかな?」

「もちろんですとも上院議員!」

「すべてが、人間のためのシステムです。この街の電気製品は言うまでもなく、写真や壁、
床や窓、壁に掛けられた絵画や本棚の書籍にまでも、マイクロ・コンピュータが埋め込まれています。

「それらのコンピュータは、お二人に付けていただいたIDチップと常にコンタクトを取りそれぞれの方が、
どこに居るのかはもちろん、脈拍、体温、発汗状況などの生理的条件も、すべて感知しています・・・」

「皆さんが暑さを感じれば自動的に空調の温度が下がり、また、万一心臓発作でも起これば、すぐに
救急隊がとんで来るという訳です・・・」

「例を上げればきりがありませんが、ここに2人が住まわれたとしましょう。するとコンピュータは、
お2人の事を学習します。」

「ほう・・・」

「生活習慣や、嗜好性を学習し、お2人の合ったプログラムを自動的にテレビ画面に表示したり、
足りない生活必需用品を、取り寄せたりしてくれるのです・・・」

「しかし、常に監視されているようでゾッとしませんな・・・」

「プライバシーはどうなるのでしょう・・・?」

「プライバシーなんてものは、他人に知られるから困るんでしょう?」

「単なるシリコンチップに知られたところで、何の問題があるのでしょうか?」

「まるで、SF映画の街ですな・・・」

「・・・・・・」

「これは10年以内の現実ですよ。少なくともベーシックな部分では・・・・ところで、この家だけで
センサーを含むコンピュータの数は、10万個以上。そして、そのコンピュータのすべてに、
私が顧問を務める、サーバーテクノス社の基本ソフト、“インスパイアMX”が使われているのです。」

「サイバーテクノス社は、パソコンソフトの“インスパイア”で世界を席捲しましたが、パソコンは所詮、
1人に1〜2台のもの・・・・」

「普及率も100%になりません・・・・ところが、コンピュータが使われるユビキタス社会においては、
100%の生活者に普及し、ソフトの需要は“無限大”に近いのです!」

「もちろんパソコンソフトよりはるかにシンプルなものですから、単価は安くなりますが、このユービトピア
のコンピュータから、1個平均10ドルのソフト使用料を徴収するだけで、100万ドルの売上になるのです。」

「そ、それは凄い!」

「・・・・・・」

「ところがこのような巨大ビジネスチャンスを、押し潰そうという輩がいるのです!・・・・」

「え?」

「先日、極東のある国で、我が国のソフトを締め出す決定がなされました・・・しかも、その国はソフトを
無償で提供するなどと触れ回っておる!無償というのが資本主義ビジネスの根幹を揺るがすことすら知らない、
無知なものどもです!」

「極東の・・・・モノ作りだけに秀でた国のことですかな・・・・?」

「ええ、そのとおりですっ!」

「ハード作りにおいては我々に劣らない潜在能力を持っているが、ソフトの創造性には掛ける・・・・
今まで通り我々のソフトを、彼らのハードに乗せて、薄利で満足していればいいものを!」


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